大腸がんの発生
大腸癌の発生は、大きく分けて2つの経路があります。
良性腺腫(ポリープ)からゆっくりと成長し進行癌になる経路と、デノボ癌(最初から癌)というポリープとは異なる発育スピードの速い陥凹型癌があります。
この陥凹型癌は、発見が難しい癌で10mm以下の小さな段階でも転移をきたす病変です。
陥凹型大腸癌(IIc)の歴史
1980年代以前、大腸癌は隆起したポリープから発生すると考えられていました。
平坦でくぼんでいる陥凹型癌は発見が難しく、発見もされない故に、実在せず『幻の癌』と言われていました。
1985年代に秋田赤十字病院の工藤進英先生は陥凹型癌を数多く発見し実在を証明されましたが、工藤進英先生以外に陥凹型癌を発見できる先生がおらず、学会からは『秋田の風土病』ではないかと揶揄されていました。
院長は大腸内視鏡について深く学びたいと考え、1990年から2年間、秋田赤十字病院の工藤進英先生を訪ね、陥凹型癌の発見をはじめ多くの事を学ばせていただきました。
1995年、日英共同研究の一環として国立がんセンター東病院から英国リーズ大学に大腸内視鏡検査の指導のため渡英した際に、日本でしか発見されていなかった陥凹型癌を英国で2例発見することが出来ました。この功績により陥凹型癌が世界の病気であることを証明することになりました。
陥凹型癌(IIc)の内視鏡的発見方法
2008年頃までは通常光(写真上段)による粘膜の発赤で発見
大腸内視鏡機種の時代的変遷
O-ring sign NBI観察によるIIcを発見するサイン(院長提唱)
内視鏡機器は進化してきており、上段の第一世代のNBIでは光量の不足がわかります。
第二、第三世代では光量不足は解消され、とくに最新のCF-X1200ZIは、明るく画質も鮮明で、遠くからでもO-ring signがよくわかりますので、IIcの発見に有用と考えています。
2017年 欧州消化器病学会(バルセロナ)でNBIによるIIc発見を発表
2008年からNBI観察でIIcの発見に努めてきました。
内視鏡機器の進歩と共に、NBIの光量・画質も進化し、第二世代のNBIからはIIcの発見が容易となりました。
NBIで発見したIIcは、陥凹辺縁が褐色リング状に見えます。院長は、これをIIcの発見所見としてO-ring signと提唱し、2017年にバルセロナで発表しました。